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選挙の公費助成を辞退
福岡民主・堤かなめ県議
あきれた理由と問われる政治家の資質

2011年6月 7日 08:30

 権力抗争にあけくれる国会議員の姿にはあきれるばかりだが、地方議員の質も低そうだ。政治家としての資質を欠く新人を公認した政党の見識が問われる。

 今年4月の福岡県議会議員選挙で初当選した民主党の堤かなめ県議(博多区選出)が、選挙運動費用のうちポスター代などを自治体が負担する「公費助成」を辞退していたことがわかった。
 
 県内では、福津市の市議選で複数の市議がポスター代金を水増し請求していたことが発覚。その後行われた福岡市議選では9人の候補者がポスター代の請求代金を減額するなど、公費助成制度に疑問符がつく事態となっていた。
 
 堤県議の場合は、告示の時点で届け出ることになっている公費助成関係の書類を提出しておらず、立候補前から辞退を決めていたことになる。
 
 堤県議側にその真意を聞いたが、返ってきた答えは政治家としての資質を疑いたくなるようなものだった。

辞退の理由
 堤県議の公費助成辞退は、同県議の公費助成関係書類を福岡県に情報公開請求したことから判明した。請求に対する県の決定通知には文書そのものが「不存在」であることが記されていたのだ。

gennpatu 047.jpg 公費助成を辞退した理由について、堤県議本人に話を聞いた。

Q:公費助成を受けなかった理由は?
堤:選挙が(東日本)大震災と重なり、税金を節約することが支援に回ることにつながると考えた。

Q:予算の仕組みを理解していればこうした考え方は出てこないはずだ。余った公費助成金が復興支援に回ることはないが?
堤:こういう時だから税金を節約することが大切。公費助成を含めた選挙制度には疑問を感じており、全候補者の政策を新聞に掲載するとか、別の公費助成のやり方があるのではと考えています。

Q:公費助成に反対ということか?
堤:反対ではなく批判しているつもりもありません。税金を節約することが大切だと考えただけです。

Q:選挙制度改革も含めて堤県議が今話したことを議会で訴えていくのか?
堤:それはしません。

Q:県議の主張の趣旨がよく分からないが?
堤:古い、明治以来の選挙手法でしょう。それは変えたほうがいいと思っていますが。

 正直、堤県議の話には一貫性がなく、理解するのが難しい。じつは、堤県議の話を聞く3日前に堤県議の後援会長にも話を聞いていたのだが、後援会長は公費助成を辞退したことについて、次のように話していた。
東日本大震災が起き、本人とも話をして、公費分を寄附しようかということ(議論も)もあった。最終的には、公費を返上することで国の方に税金をプールできる。そういう意図で公費を返上できるか選管に相談し、結果的に請求辞退を決めた」。

資質疑う公私混同
 堤県議本人は、「税金をプール」という後援会長の言葉については否定したものの、公費助成辞退の背景や理由はほぼ一致している。東日本大震災の発生を受けての判断だったということと、それに対する支援を公費助成金に結びつけた点である。
 
 堤県議と後援会長、両人の話で共通しているのは、自己資金を原資とする義援金を、辞退した公費と同様に考えたところだ。
 はなから税金による助成金を自分のカネと決め付けており、公私混同もはなはだしい。あきれた神経というほかない。
 
 そもそも公費助成が受けられるのは、得票が供託金没収点を超えた候補者のみで、選挙前に組まれた予算は堤県議のカネではない。助成金を我が物とする考え方自体、当選を前提とした傲慢さの証明に過ぎない。震災支援を言うのなら、自分のカネでやれということだ。

 「税金の節約」を辞退理由に挙げているが、まともな政治家なら、当選した後に、正攻法で税金のムダ遣いを正すべきである。

 公費助成制度には、ポスター製作費や選挙カーのレンタル料、ガソリン代などを公費で負担し、候補者の金銭的負担を軽くすることで政治の公平性を保つという目的がある。つまり、カネのない人間でも一定の支持さえ集めれば政治の現場で活躍することを可能にするシステムなのだ。
 民主党の組織に支えられた堤県議には、十分な資金があったということだろうが、その考え方は、公費助成の理念を否定することにもつながる。

 堤県議の政治家としての資質が問われているのは言うまでもないが、もともと選挙に出る資格があったのかどうかさえ疑わしい。次稿でその実例を示したい。

つづく



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